凍て付く夜
人ならば息は白く、闇に映えるだろう
だが、ガイロナの地に生える柿の木の呼吸は誰に見える事も無い
静かに、静かに行われる
それは夜も更けた頃
雪のちらつく中でそっと
周囲の音は全て冬の彩りが吸い取って何も残さない
無音の世界
樹は、静かに身体を収縮させて呼吸をする
眠る代わりに思いを馳せ
夢の代わりに想像し
寝言の代わりに歌を紡ぐ
今宵はー何をー何方を謳おうーかしら
浮かぶのは今迄出会った事の有る人
何人も何人も
浮かびは消えてまた浮かぶ
ふと、有る人を浮かべると感じるはずの無い熱を感じた
今宵は彼女を謳ってみよう
ら:落日の誓い胸に秘め
い:今世の戦を彩るは
あ:赤く誇る乱の華
見える色とは別の歌
名を借り謳う仮初の歌