ガヤガヤとうるさい声が辺りを賑やかせている

どうやら此処は酒場のようだ

一人の男が酒を飲んでいる

その前に腰を降ろす男が一人

手に持つ酒を彼に注ぐ



さて、先生

今日はどんな話を聞かせてくれるんだい?


はは、君か

狂人と呼ばれる男に話を聞きに来るのは君位のものだよ

ああ、面白い。いつか君を覗かせてくれ

だが、今日は御代の代わりのその酒で許すとしよう


そりゃ助かるね

さて、んじゃ今日は気になる物を見かけたんでな

その話を知ってたら教えてくれ


精霊?また珍しいものと出会ったものだね

ああ、でも、人の社会に混ざっているものも居るから今は差ほどでもない、か

では、私の知る限りを話そうじゃないか


精霊とは



そもそもどんな存在であるのか

人の隣に何時の頃からか存在し、人と共生をしている

いや、それとも彼らは人ではなく「世界」と共生をしているのだろうか

そうではなく、彼らそのものを「世界」と見るものも居ると聞く

だが、実際は彼ら自身ですら自身の生まれを知っているものは少ないし、知っていても「人」に教えるものは少ないだろう

今ある文献に載っているのは恐らくは捕まえ痛めつけその上で搾り取った話なのだろうね

おや?妙な顔をする

日常的な事じゃないか

それが精霊であれ人であれ情報を持つものに対する行動など多寡が知れているものさ

戦争でも良く聞くだろう?

スパイを拷問して口を割らせる

情報を得る為の手段としてはポピュラーだ

ああ、話が逸れたね


精霊の話に戻るとしよう


彼らは基本的に自分の「属」にその性の影響を受ける

此処で言うのは性別ではなく性格

性別は彼らにはあってないようなものだからね

だから「火」の属のものは猛きものが多く、「水」の属のものは流れるように穏やかなものが多い

その程度の認識で構わないさ

それに、何事にも例外はある

最近では影響を受けない精霊も多いみたいだしね

何で知っているかって?

はは、そこら辺を歩いているものたちを見ていれば解るよ。彼らは思いのほか人の世界に溶け込んでいるのだから


そして最も重要なのが彼らの持つ「力」だ

彼らはその「力」である程度区分される

下級、上級といったようにね

ただ、この区分けを使うのは一部の学者で一般的じゃない

何より、区分けされる事を彼ら自身嫌うだろう

彼らと円満な関係で居たいなら口にしない事だね


さて、この「力」だが詳しい事は解っていない

というよりもこれを説明しようとすると彼らのいた「世界」の話をしなくてはならなくなる

それは別代金だよ


まぁ、簡単にだけ説明しよう

私たちが日常的に目にする魔法

その内の火を起こしたり風を吹かせたり、これが精霊魔法だ

これは精霊界と言う場所から力を無理やり引き出して行う力任せの魔法でね

使いすぎるとその「属」が弱まり、いずれは自然の破壊などへ繋がる

まぁ、知っている者は少ないがね

ましてや、便利な魔法を今更人が手放せるとも思わない

あの下賎な魔法使いと呼ばれる連中なら特にな

ま、そんな感じで彼らには力の源となる世界がある

彼ら自身が起こす魔法のようなものは実際はどんな原理かは不明だ

「人」が行うように無理やり力を引き出す物ではないというのが一般的な見方だがね

それは誰もまだ知らない事なのさ


さて、他に何を話しておこうか

ああ、そうだ

精霊にはそれぞれ基本となる形がある

一般的に精霊と呼ばれるものである四精霊はそれぞれに

魔火は燃え盛る炎、魔水は流れる水、魔風は木のうろに潜む吹き溜まり、魔土は石まじりの泥

の形をとることが多い

そしてまだ誰も目にしていないのが「起源」「裏起源」「虚無」「裏虚無」と呼ばれる四使精達だ

彼らについては解っていない事が多い

その四界から力を引き出し使う魔法が存在するから精霊も居るのだろうが、実際に目にした者が殆ど居ないせいだろう、幻の精霊達だな

彼らはそれぞれに空間、時間、光、闇を象徴している

お前さんが見た精霊はもしかしたら彼らだったかもな


さて、私が知っているのはこういった事ぐらいだがお役に立ったかな?

ああ、そうか、ではその酒を頂こうか

はは、飲んでいいと言われても役に立たない話をした御代として頂く気にはなれんさ

役に立ったときだけ頂く

それがこの私のルールだ


まぁ、また何か聞きたくなったらくるといい

私が其れについて知っていて、君が代価を払うなら、私は君に私の知恵を披露しよう



そういうと男は一人酒を飲み続ける

彼は狂人と呼ばれる学者

そう呼ばれる理由を彼はおろか周囲の人間は誰も知らない

ただ、何時からか狂人と呼ばれ、それが今も続く


彼が本当に狂っているのかどうか、それはいつかの講釈で