此れは紙に書かれた記録ではなく、ただ柿の心の中、夢の中でのつづり



人の好きな感情は何だと思う?

好意等の正の類でしょうか?

では嫌いな感情は?

負の類でしょうか?

お前は幸せな子だね

どうしてでしょう?

人を知らないから

少しは学んできましたけれど、足りないでしょうか?

足りないよ。全くね

では、貴方の思う事を教えて下さいませ

好奇心かな。色々な考えを知るのはいい事だ

はぐらかさずに

人の好きな感情はやはり嫌悪だよ

そんなはずは無いかと

何故言い切れる?

好意に塗れて生きたいと思うのが人ですもの

ある意味正解、ある意味不正解だな

何故でしょう?

人を嫌う時こそ人は一番強い感情を覚えるからだよ

それは強いだけで好きとは言え無いかと

好きでも無い感情を強く出すものか、そうは思わないか?

人の感性は柿には解らず、けれどそういうものとは思えず

感情を覚えたなら樹木でも理解できると思ったがな

感情があるからこそ理解出来ないのかもしれません

人に期待でもしているのかな

出来る程、彼らを知りません。また、する理由が見つかりません

価値が無いとでも言いたげだね。人に価値が無いといえるのは樹木のお前ぐらいだろうよ

価値は定義で変わりますから。価値を定める事すら無意味に思えます

人の行為を否定するか

致します

では何故人を知ろうとする

知った上で、否定する為に

大した樹木だ。人より上のつもりかな

そういう定義づけが私には理解できません

………根本は染まらないんだな。人に塗れても

樹と人は違う物。樹は人になれず、人は樹になれませんから

ご高説御尤も。それでこそ名付けたかいがあるよ

名付け、感謝しております。おかげで形と感情を得ましたもの

どうせならもっと色々得ておくれ。そうしてどう君が最後まで否定を抱えているかどうか教えて欲しい

貴方が生きていれば

それもそうだ。君の最後に立ち会えるほど私は長くは生きれない

時の流れの差と言うのは誰にも変えれませんものね

そうだね。ああ、もう時間だ。朝が来る

またの逢瀬まで

ああ、またの逢瀬まで



朝の陽射しに目が覚める

交わした会話は覚えておらず、出会った事すら記憶に残らない

そんな夢現